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砂糖の世界史

砂糖の世界史

  • 岩波ジュニア新書 出版
  • 川北稔 著

筆者のあとがきに非常に心打たれたので、引用する。

歴史を学ぶということは、年代や事件や人名をたくさん覚え込むことではありません。いまわたしたちの生きている世界が、どのようにしてこんにちのような姿になってきたのかを、身近なところから考えてみることなのです。

本書は上記の信念のもと執筆されており、全編通して平易な言葉で、子供に根気良く話しかけるように世界史を紐解いてくれる。私のように、恥ずかしながら世界史にあまり触れてこなかった人間でも、近代のヨーロッパやアジアの発展と、その裏に押し込められた奴隷貿易の実態を知ることができる。

本来ネイティブ・アメリカンの土地であるはずのアメリカになぜ白人がいるのか、いわゆる”白人社会”に黒人が混ざっているのはなぜか、黒人の多くいる土地が今日では発展途上国となっているのはなぜなのか。本書を読めばそれらが理解できる。

年号や事件を淡々と追うのではなく、世界商品である砂糖の流れに乗って、イギリスを始点に世界中を巡る世界史の旅に出る。世界商品を追いかける性質上、紅茶やコーヒーの話も少し出てくるが、これらに関してはちくま新書から出版されている『世界史をつくった海賊』(竹田いさみ著)なども詳しいので、興味があれば読んでみてほしい。

本書を読んで得られる知識は以下だ。

  • 砂糖はどのようにしてヨーロッパ人に発見されたのか
  • 砂糖はどのようにして生産されたのか
  • 砂糖はどのようにして世界商品となったのか
  • それらに関わった白人と黒人はどのような立場の人間だったか
  • プランテーションとは、モノカルチャーとはなにか
  • これからの砂糖の価値

挙げればもっとあるが、砂糖を足掛けに世界の動向を知ることができる。近代から現代にかけての世界がグラデーションのように徐々に繋がり、歴史上の他人事が、今日の自分事となる。

まさしく世界史に興味を持つきっかけとなりうる一冊で、世界史という広大な海の入門書である。